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2012年02月18日

日銀の金融緩和(2012/2/14)- その1

日銀が,バレンタインデー予想外の金融緩和に踏み切りました.

この後円相場はやや円安に振れ,週末にはドル/円は79円台半ば,
ユーロ/円は昨年12月以来となる104円台半ばに上昇しました.

今回の金融緩和は,こうした短期的な反応に限らず,長期的な
円高局面が反転するきっかけになる可能性があります.

今回の金融緩和では,
 資産買入等の基金を10兆円程度増額して65兆円程度にした
これに加え,
 初めて「中長期的な物価安定の目途」を設定し
 当面前年比+1%を目途とする
ことを明らかにしました.

これについて,「金融緩和が好感された」という捉え方がされて
います.株式市場から見ればそうかもしれませんが,長い目で
見ると,金融政策への不安を反映しているということを,
認識しなければなりません.
(この項続く)

posted by Globe at 18:48 | 為替相場応用編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月19日

「弱い日本の強い円」(佐々木融)

「弱い日本の強い円」を最近出版した,JPモルガンの佐々木融氏は,
この2〜3年最も「乗っている」為替アナリストである.

 

リーマン・ショックの時に,それまでの「円キャリートレード」が
大量に巻き戻され,急激な円高となったのは「リスク回避トレード」の
顕著な例だが,大方の市場筋は,これを一時的な要因だと思っていた.

その中で,佐々木氏は「リスク志向とリスク回避」(最近は
「リスク・オン,リスク・オフ」という呼び方をすることが多い)を
いち早く相場材料のメインテーマに据え,ほぼ一貫してこの観点で
為替の動きを予測していた.

そして実際に,2009年以降今日まで,

 リスク志向が高まれば株や高金利通貨の買いと円の売り(円安)
 リスク回避傾向なら株や高金利通貨の売りと円の買い(円高)

というマーケットの行動様式がほぼ続いてきたため,
佐々木氏は「当たる」為替アナリストとして人気が上昇し,
説明のわかりやすさもあって,最新の専門誌でのランキングで
トップに選ばれたのである.


ところで,「リスク・オン,リスク・オフ」がいつまでも為替
相場のテーマではあり続けない.いつかテーマは変わり,
市場はそれを中心に当分の間回ることになる.

...と言っても佐々木氏の能力を貶めるわけではない.
相場のテーマが全く変わっても,佐々木氏は本来非常に正統派の
為替アナリストであり,高い水準の分析を続けることだろう.

彼は元・日銀の為替担当者として,実際に介入の実務も経験している.
本書に書かれている介入に関する記述も,今の為替アナリストの
中では彼しか書けないという内容がビジュアルに描かれている.
こういった面に関心のある読者にとっても,満足度が高い
一冊であると思う.


確かな実力と経験を持つアナリストが,最も「旬」な時期に
書いた一般向けの本が「弱い日本の強い円」である.

おそらく為替は来年のうちには新たな展開が始まり,
佐々木氏も本来業務に追われてマス向けの本に割く時間は
なくなるだろう.

その意味では,為替相場を動かすメカニズムを知りたい人に
とって,当分の間出てきそうもない本であろう.


タグ:為替 介入
posted by Globe at 17:19 | Comment(0) | 為替相場の参考書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月06日

S&Pが米国債を格下げ

[米国債] ブログ村キーワード

格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が
米国債をAAAから格下げしてAA+にしました.
その影響を考えてみましょう.

まず,格下げを受けて自動的に対象債権を売却しなければ
ならない運用者はいます.運用対象の投資基準を「AAAに限定」
などと定めている投資ファンドです.

ただし,ムーディーズとフィッチは格付け据え置きをすでに
表明しています.この場合
「S&PでAAA」あるいは
「S&PまたはムーディーズがともにAAA」
などという基準であれば売却ですが,この2大格付け会社
またはフィッチを入れた3者のどれかでAAAと定めている
場合(一般にはその方が多いようです)には,必ずしもすぐに
売る必要はなく,格付け以外の要因を検討することになります.

では,大手運用者が「米国債は売却」と決定した場合に,
それに代わる投資対象は別の通貨になるでしょうか?ここが
為替に関連してきますが,それには「国の配分」とは別に
定める「通貨配分」が問題になります.

つまり,「対象はAAAだけ」で米国債を売却せざるを得なくても,
通貨「米ドル」の配分を変えなければ,世界銀行など
AAA格の国際機関の発行するドル建て債を組み入れるという
選択肢があります.

たしかにS&Pによる格下げはドルにとって悪い材料ですが,
大手格付け会社の判断が分かれており,また昨日(8月5日)の
米雇用統計が改善した状況で,慌てて米国債やドルの売却に
動く投資家は多くないと考えるのが自然だと思います.

ドタバタ動くのは決して得策ではありません.

(余談)
 「ドル/円の80円台は案外近い将来に見られるような気がします」
 と書いたばかりでしたが,介入で予想以上に早かったですね.
posted by Globe at 12:32 | 為替相場の要因 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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