格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が
米国債をAAAから格下げしてAA+にしました.
その影響を考えてみましょう.
まず,格下げを受けて自動的に対象債権を売却しなければ
ならない運用者はいます.運用対象の投資基準を「AAAに限定」
などと定めている投資ファンドです.
ただし,ムーディーズとフィッチは格付け据え置きをすでに
表明しています.この場合
「S&PでAAA」あるいは
「S&PまたはムーディーズがともにAAA」
などという基準であれば売却ですが,この2大格付け会社
またはフィッチを入れた3者のどれかでAAAと定めている
場合(一般にはその方が多いようです)には,必ずしもすぐに
売る必要はなく,格付け以外の要因を検討することになります.
では,大手運用者が「米国債は売却」と決定した場合に,
それに代わる投資対象は別の通貨になるでしょうか?ここが
為替に関連してきますが,それには「国の配分」とは別に
定める「通貨配分」が問題になります.
つまり,「対象はAAAだけ」で米国債を売却せざるを得なくても,
通貨「米ドル」の配分を変えなければ,世界銀行など
AAA格の国際機関の発行するドル建て債を組み入れるという
選択肢があります.
たしかにS&Pによる格下げはドルにとって悪い材料ですが,
大手格付け会社の判断が分かれており,また昨日(8月5日)の
米雇用統計が改善した状況で,慌てて米国債やドルの売却に
動く投資家は多くないと考えるのが自然だと思います.
ドタバタ動くのは決して得策ではありません.
(余談)
「ドル/円の80円台は案外近い将来に見られるような気がします」
と書いたばかりでしたが,介入で予想以上に早かったですね.