2007年12月01日

ドルの危うい回復

2007/12/1

ドルが昨日の東京からニューヨークにかけて回復し
ドル/円は久しぶりの111円台で引けました.

ドル/円が107円台に下落してからの回復は「リスク
許容度回復」の視点から説明する見方や,「単に
チャートの節目の107円台まで達したので自律反転
した」という単純な見方まで,様々な立場から論じ
られています.

もっとも,単純とは言いながら,短期的には後者の
見方は外れてはいないでしょう.

ところで今回のドル反転局面の特長は,米株の反転と
同時に起こっていることです.そして米株がこのところ
連騰している理由は「利下げ期待」.

しかし,その利下げ期待が起こる理由をよく見ると,
「その日に発表された米国の経済指標が弱かった」
ということに行き着く,というパターンの繰り返し
です.

弱い指標が出てくれば,FRBが最悪の事態を防ぐ
ために対応するので良くなるだろう,といういかにも
アメリカ人らしい楽観的な反応です.そのような予想
が将来実現するかも知れません.しかし今見えている
部分が良くないということだけが事実だということは,
忘れない方がいいと思います.

私は基本的にはサブプライム問題についてもそれほど
悲観的ではありませんし,ドルの腰は強いと思います.
ただ,近いうちにドルが力強く反騰を始めると考える
には,市場全体を覆う漠然とした不安が解消される
必要があります.
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2007年06月20日

福井総裁「ハト派」発言?

2007/6/19

先週金曜日の日銀会合の後で記者会見した福井総裁が,
これまでの利上げに積極的な姿勢を後退させた印象を
与えた,ということで日本時間夕方から円安が進み,
ドル/円は123円台後半,ユーロ/円はさらに大きく反発
して史上最高値を更新しました.

ただ,この「福井発言」はちょっと曲者です.
というか,マーケットが過剰反応でした.

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2007年05月03日

為替が1ドル=120円で静かな理由(5月2日)

ドル/円がようやく120円に到達しました.
繰り返し指摘しているレンジの上限です.普通は短期間でも
狼狽的な動きによってオーバーシュートし,121円近くまで
行った後に結局騙しとわかる,という局面がありますが,
今のところ全くありません.

また今回は,「円安」「キャリートレード継続」というかけ声
の割りには,ここに到達する前の118〜119円台の動きも非常に
慎重で,こわごわ120円を付けてみたというような動きです.

ドル/円の週足を見ると一番はっきりわかりますが,ドル/円が
120円付近で頭を打つと,見事なヘッドアンドショルダー形成
の始まりが意識されます.昨年10月の120円直前,今年2月の
122円台,そして今回の120円そこそこ.

ここを深追いすると,気がついたら相場は116円台に向かい,
自分は取り残されているというシナリオを気にしている人は
意外と多いのかもしれません.
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2007年04月29日

相場の変化に備えておこう

先週の値動きを先々週と比べると、
 ドル/円:0.88円 ドル高円安
 ユーロ/円:1.90円 ユーロ高円安
 ユーロ/ドル:0.0060ドル ユーロ高ドル安
と、「ユーロ→ドル→円」の順に強かったことがわかります。

今月ワシントンで行われたG7での声明で、円安及び為替全般に
関する声明に目立った内容がなかったため、ユーロの上昇基調が
それ以後加速しています。G7前に注目されていた対円レートだけ
でなく、対ドルでも27日には1.3683ドルまで上昇し史上最高値を
更新しました。

今年1月にドイツの付加価値税(日本の消費税に相当)が16%
から19%に引き上げられましたが、最近の経済指標はそれによる
景気への悪影響をほとんど感じさせないものが続きました。
それが、もともと景気よりもインフレにより配慮するECBの

利上げ継続への確信度を高め、ユーロは上昇してきました。
欧州経済が長期にわたるユーロ高への抵抗力を持つとの判断も
あり、ECBは6月に再利上げして政策金利が4%に達すると見られ
ています。

ただしこのところ、フランス大統領選挙を前に欧州から外に
向けた発言が少なくなっています。6日の決選投票で選挙に
決着がついた後は、再び「アジア通貨に対するユーロ高」に
言及される機会が増えるかもしれません。

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2007年04月18日

懲りないドル売りの修正は円クロスの転機

2007/4/18


 相変わらずマーケットは「キャリートレードによる円売り・高金利通貨とユーロの買い」が中心です.同時に「ドル安」も最近の傾向です.一部(というほど少なくはなく,むしろ著名なエコノミストや学者も多いのですが)の人のドル安志向は驚くほどです.彼らがまた失望した時,円クロスでの円安も大きな転機になります.

 もう1年近く前にFRBが利上げを停止した時から,多くの人が「次は利下げ」「少なくとも1%」などと決めていました.しかしFRBは前々回のFOMCまではずっと「さらなる利上げが必要となる可能性とその幅」が最大関心事だと言い続けてきました.それが,私が「利下げもドル安・円高もない」と指摘し続けていた大きな理由でした.そして前回(3月),FOMC声明から初めて「利上げ」が消えました.

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2007年03月14日

円は着々とレンジ形成中

2007/3/14


このところドルに逆風が吹いています.116円台からいったんは117円そこそこまで戻したドル/円も,米国の小売売上も予想を下回って再び下落しています.

もう1つは最近話題のサブプライムローンに関する懸念があります.これはそう深刻な展開にはならないと思いますが,今マーケットでは旬なテーマになっているので,少なくとも短期的(と言っても私はデイトレードには興味がありませんので,1カ月以内という意味)にはドルは頭を押さえられそうです.

一方,ユーロ/円も153円台の円高になっています.つまり単にドル安ということではなく,円に対する売り疲れが出ているのでしょう.先日も指摘した通り,ユーロ圏当局からの円安牽制発言が根強いことも気になっているのでしょう.単に金利が低いから円は売りだという単純な発想ではマーケットは動いていないようです.

昨日(13日)の日経長官に出ていた,西村日銀審議委員の寄稿を読まれたでしょうか.CPIがゼロ前後であっても,その数字だけでは景気に対する不安材料にはならないと明言していました.日銀は「慎重」と常に前置きしながら,基本的な景気判断は(岩田副総裁以外は)強気です.日本株に再び投資する機会を狙っている海外勢は,こうした景気判断に敏感に反応しやすくなっています.

昨年末のように簡単に119円,120円という展開は,今の円には望めそうもありません.前回示した115-125というレンジの中で,今はその上限が120円になかなか届かない状況になっています.
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2007年02月27日

「ドル売り」か「円買い」か

2007/2/27


 ドル/円がまた118円台まで下がってきました.

 少し以前から,米国のサブプライム(信用力が劣る貸出先への)住宅ローンの焦げ付きが増えていると報じられていましたが,これが注目を集めてドルが全面安の様相です.対ユーロでもドルは売られていますが,対円の動きの方が大きいので,ユーロ/円も157円台半ばを割り込んでいます.

 いったん動きが出ると,必ずそれを後押しするものが横から出てくるのが相場の常です.今回も「参院選前に日銀の追加利上げの可能性」という観測が出始めています.これにはまだ「どうせ提灯をつけているだけだろう」「万一本当でも,まだ超低金利に変わりはない」という見方が強いですが,あまり無視しない方がいいと思います.

 福井総裁のたびたびの発言の中で,利上げは「慎重に」という部分ばかりが注目されていますが,一方で現状は「正常でない」状態だと繰り返していることも事実です.先日は「できるだけ早く正常に戻したい」とも発言していました.前にも書きましたが,福井総裁のこの「自信」を市場が感じ取って確信した時,金利差は今よりずっと小さな意味しか持たなくなります.
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2006年11月12日

米国中間選挙を終えて

2006/11/12

イラクばかりが争点で、金融市場では異例ともいえるほど注目度が低かった米国の中間選挙も終わりました。上院の過半数まで失い、ブッシュ政権は残りの2年間に大幅な軌道修正が避けられないようです。

ある程度目立った反応は債券市場の上昇(金利低下)に見られました。軍事支出を中心とする歳出削減への期待から長期債は買われ、10年債利回りは4.59%まで低下しました。

為替市場は、
 共和党の敗北は今後のブッシュ政権の運営を不安定にする=ドル売り
 民主党主導の議会で財政赤字拡大に歯止めがかかる=ドル買い
 通商問題に熱心な民主党の影響力拡大でドル安バイアス=ドル売り
といったいくつかの教科書的なパターンはあるものの、今のところどれも支配的ではありません。先週末比で見る限りでは、ややドル安に振れた程度で状況は非常に不透明です。

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2006年10月15日

「片目で読む?」日経新聞金融記事

2006/10/15


 ドル/円が120円寸前まで迫り、一応の達成感と「まだこれから」という期待が交錯している感じです。 ドルが対円だけでなく対ユーロでも強くなっている背景には米国の金融政策に対する見方の変化があります。 私がこのコラムでたびたび否定してきたFRB(米連邦準備制度理事会)による米国の年内「利下げ」説が市場参加者の頭からほぼ払拭されました。FF(フェデラファンド)金利1ヶ月物先物の水準は、来年1月の利下げの可能性もほとんど予想されていないことを反映しています。

 これはFRBの関心事が景気減速であるかインフレ懸念であるかという問いに、当面はインフレ懸念であるという答えが出たということです。過去2回のFOMC(連邦公開市場委員会)では、ラッカー・リッチモンド連銀総裁がただ1人利上げを主張しました。しかしコーンFRB副議長のインフレ懸念発言に続き、ハト派(景気重視)と見られているフィッシャー・ダラス連銀総裁も10日に「追加的な措置」に言及し、 次回(10月24日)以降のFOMCでは、利上げ決定には至らないまでも利上げ賛成派が増えてもおかしくない状況になってきました。
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2006年10月01日

逆イールドから見えること

2006/10/1
(今回の内容は「Go-21ホームページ」に寄稿したものです.)

「利下げシナリオ」の実体

 以前も触れた通り、私はFOMCの次の動きは利上げ再開だと考えていますが、金利先物の価格に反映されているように、市場の大勢は「米国の利上げ局面は終了した」という見方で動いています。あくまで「利下げの時期」が早いか遅いかという判断から、日々の指標に一喜一憂しています。そして金利低下が始まればドルは金利面での優位性を失って下落するという為替のシナリオがついてきます。

 米国の金利が低下するというシナリオで最近常に強調されるのが、米国の住宅市場の低迷です。これが米国経済に決定的なダメージを与えないと考える理由を以前ご紹介しました。今でも、どうしてあれほど住宅だけにこだわるのかは疑問です。考えられるのは、金利の見方全体が債券市場に引きずられているのに、そこに景気やインフレ見通し以外の要因が大きく影響しているのを見落としているということです。そして「他の要因」とは、アジアを中心とする外国からの米国債に対する需要です。

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2006年08月27日

熾烈な「最下位争い」

為替市場では、日本のCPIが最後に来たということで金曜日にドル/円が
117円台のドル高、
ということですが、実はこのところドルと円は通貨の中で
「熾烈な最下位争い」(JPモルガン証券)
を続けています。
プロ野球セ・リーグの5位巨人が6位横浜とのゲーム差をやや広げたと
いうところです。

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2006年08月06日

米国金融引き締め 最終局面の読み方

2006/8/5

 前回の米国雇用統計の発表から1ヶ月。相場は同じような水準になっ
ています。しかしこの間は、ドル/円が118円寸前まで上昇したように
「行ってこい」の1ヶ月でした。日銀のゼロ金利解除、欧州中銀(ECB)
の利上げと、ほぼ予定通りのスケジュールを消化して、市場は8日の
FOMCを待っています。中東情勢の緊張を反映して「有事のドル買い」
と言われた局面も、実際には米国の利上げ予測が強まった時とほぼ符
合していました。市場は「金利」に支配される局面が続いています。

 4日(金)のニューヨーク市場で、FOMCの決定を占う最後のテスト
と見られた7月の米雇用統計が発表され、非農業部門の雇用者数が11万
3千人増加と市場の予測を下回り、6月に比べても減速したためドルが
売られました。

 しかし失業率も4.8%と前月より悪化したにも関わらず、ドル/円で
113円台が一瞬という限定的なドル売りにとどまったのは、FRBの
インフレ懸念という点で重要な意味を持つ平均時給が前月比+0.4%と
予想を上回ったために、やはりFOMCを見極めたいという警戒感が消
えなかったためでしょう。

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2006年07月09日

為替市場の「情報」の特殊性

 金曜日(7月8日)の米国雇用統計にはあわてた人が多かったようです。非
農業部門の雇用者数が当初は15万人程度と予想されていたのに、 水曜日に
突然「雇用統計と90%の相関がある」というふれこみの別の指標が大幅増だ
ったため、 雇用統計に対する楽観的な見通しが突然織り込まれた形で発表
を迎えてしまいました。 実際の数字は当初予想よりさらに低い、12万1千
人増というものだったため、ドル/円は一時113.80まで下落し、そこからは
大した戻りがないまま、114円前後で週を終えました。

 さきほどの「雇用統計と相関の高い指標」というのは、米国の「オートマ
ティック・データ・プロセッシング(ADP)という人材派遣業者(ブルーム
バーグでは調査会社と伝えていましたが)が毎月行なっている調査の結果で
すが、不思議だったのは今までほとんど聞いたこともなかったこの調査が突
然持ち出されたことです。

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2006年06月18日

不安定な米金融市場の読み方

2006年6月17日

 いろいろな市場が気迷い気味ですが、中でも米国債はまさに右往左往という
感じです。つい先日10年物の利回りが5%を割り込んでいたと思ったら、
いつのまにか先週の引けは5.12%まで上昇。フェデラルファンド(FF)
レートが5.25%ですから逆イールドですが、米国景気は上向きなのか下向き
なのか、市場は図りかねているのでしょうか。

 先週の木曜・金曜に発表された一連の景況感指数(ニューヨーク、フィラ
デルフィア、ミシガン)を見る限り、6月の景況感は軒並み予想を上回る結果
でした。バーナンキ議長を始めとするFRB高官の相次ぐインフレ警戒発言
に、利上げ継続による景気のオーバーキルを心配する見方もありますが、私は
冷え込むことはないと楽観的に考えています。

 面白いのは、バーナンキ議長に対する信頼感という議論です。曰く、彼は
就任当初は景気に配慮する発言をしていたのに、市場が利上げ打ち止めを先
取りした反応を見せると、「市場に誤解を与えた」と言ってインフレ警戒発
言を始めた。 この一貫性のなさは金融政策に対する不安感を高めている、と。
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2006年04月02日

量的金融緩和解除で誰が「円キャリー」をやめるのか

2006年4月2日

日本の決算期末である3月31日,今年は為替市場に何の波乱もありま
せんでした.日本では金融の量的緩和が解除され、米国では市場の予想
通りの利上げが継続されたばかりで相場に材料出尽くし感があったと
いうのが大方の見方です.これで出尽くし感と言われてしまうと,いか
にも最近の為替市場は金利しか見ていないようです.

日米欧の金利がすべて上昇に向かってはいるものの,市場のコンセンサ
スとしては今後年末までの上げ幅がユーロ(現在2.5%)及びドル
(同4.75%)は0.5〜0.75%,ただしユーロは0.75%寄りであるのに対し
ドルは0.5%寄り,一方日本は0.25〜0.5%かという状態です.(続きを読む)
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2006年02月05日

円相場と株式市場の関係

為替レート(ここではドル/円を考えますが)と株価の関係を論じる時,株式市場
を見ている方ならば「円安・株高」に違和感がないでしょう.株式市場では為替
が株価に与える影響という観点から考えるので,「円安好感」の株価上昇という
見出しがたびたび新聞の紙面を飾ります.

一方,為替市場では逆の関係になることがよくあります.日本の株価が上昇し,
そこに海外からの対日株式投資が強く働いている場合,株の購入に伴う円買い需
要からドル/円は円高方向に向かいやすくなります.「株高・円高」です.

昨年1年間の外国人投資家による日本株への投資額が10兆3000億円に上り,
過去最高だった1999年の9兆1000億円を大きく上回っ渓も関わらず年後半
に「株高・円安」が進んだのは,外国人投資家が株を買うための円を買わず,
円を安い金利で借り入れ,円買いが生じなかったためだと指摘されています.

こうした海外投資家の動向は2006年も変わらないのか,また昨年の円安要因に
変化の兆しはないのか,という2つの点が今年の基調を決める重要な視点です.
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2006年01月22日

双子の赤字ー為替市場の妖怪(2)

2006年に入っての円高ドル安に,「ついに来た株高円高「局面は変わった」と
いう声が一部で高まりました.そして「米国の経常赤字が再びドル安要因とな
る」というコメントも目立ってきました.

米国の経常赤字くらい規模の点でも対GDP比率で見ても大きくなると,市場の
話題になろうがなるまいがドル売り要因です.そしてこの要因はもう何年もの間,
ドル安局面だけでなくドル高局面でも存在し続けてきました.(→「双子の赤字
ー為替相場の妖怪」
参照)

つまり米国の経常赤字拡大の下でのドル高局面というのは,このドル売り要因を
上回るドル買い材料がある(あった)ということです.2005年は日米金利差と
その拡大傾向,そして米国の低インフレ下での堅調な債券相場が,ドル買いの魅
力を高めました.

1月のFOMCで米国の金融引き締めの最終局面が見えてきたとして,ドル売り
が強まりました.しかし本当に米国への資本流入が鈍化して経常赤字の問題を
改めて表面化させるほどに状況は変化しているのでしょうか.足の速い投機
マネーならばともかく,落ち着いた投資の一環として為替を見る場合には,も
う少しよく観察する必要があります.
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2005年11月26日

バーナンキ次期FRB議長

グリーンスパンFRB議長の後任として指名されたベン・バーナンキ大統領経済
諮問委員会(CEA)委員長について,見方が割れています.

一般には,FRB理事就任直後のデフレに関する講演に見られるように,米国経済
のデフレ懸念に強い関心を持つ,ハト派と考えるのが妥当と思われます.

指名された後の議会での質問に対し,まず「グリーンスパン路線の継承」をあげ
たことから,意外とタカ派的な面も? という観測も強くなる局面がありました.
しかしあくまでもこのあたりは相場のアヤに過ぎないと考えています.
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2005年11月24日

相場のテーマは何か

2005年の秋に日本とドイツで行なわれた総選挙の後の為替市場の反応は,相場を
見る上で大切なことを示しています.

日本では小泉政権が
 「自民+公明で過半数を維持し、小泉首相が続投する」
というシナリオを覆して圧勝しました.市場関係者は基本的に小泉政権の安定を
日本経済と円のプラス材料と解釈しています。特に海外ではそうです.そして
 「自民の単独過半数による小泉続投」
は円の急上昇につながると言われながら,それはごく一時的に終わり,その後
円安ドル高が進みました.

一方ドイツでも,与野党ともに過半数割れという,選挙終盤まで可能性が非常
に低いと言われた結果が出ました.しかしこちらはこの「最悪の」結果に素直
に相場が反応し,ユーロはその後下落基調になりました.

対照的な反応ですが,共通点があります.それはドルが強いということです.
市場の目はドルの金利がこの先どこまで上がるかにまず向けられています.そ
の場合,日本とドイツの選挙という大イベントも脇役です.

為替が2通貨の相対関係である以上,本来の相場のテーマでないことにあまり
目を奪われるのは,誤った判断を招いてしまいます.
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2005年11月23日

マクロ経済指標としての日本国債

今の日本の国債相場の動きは非常にわかりやすい為替の判断材料を与えてくれます.
純粋なマクロ指標として絶好の対象になるので注目です.

今の金利水準での日本国債の相場は,かなり純粋に経済動向だけを反映しています.
これが米国債だと保有者は日銀その他アジアの中銀を始めとする海外の投資家の比
重が高く,そうした海外マネーが米国の経常赤字をファイナンスしています.した
がって,毎月中旬に前後して発表される米国の貿易収支と対外対内証券投資の数字
を比べて,海外マネーの流入額が不足(十分)だと判断されるとドルが売られる
(買われる),という動きが毎月繰り返されています。

日本国債に投資する外国人の比率は,発行額のわずか4%です.非常に低いです.
また日本の経常収支は大幅な黒字であるため,海外投資家の債券投資動向は,米国
ほど為替対して深刻な意味を持ちません.このため景気やインフレの見通しを背景
とした国内投資家の動向が,素直に市場に表れています.ローカル市場です.

また,国債に注目するもう一つのメリットは,日々動く水準を追えるという点です.
一般の経済指標は通常月次でしか発表されず,その値が予想と大きくぶれることも
あり,さらに前月値の修正もあります.しかし昨日1.5%だった国債利回りが,何も
ないのに今日は1%などということは起こり得ません.非常に安定性の高いマクロ指
標が国債です.
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2005年11月19日

ISM製造業景況感指数

米国の「ISM製造業景況感指数」は,全米供給管理協会(ISM)が製造業の購買
担当者に対して生産,受注,在庫,雇用,価格などに関するアンケートを行ない
「好転」「横ばい」「悪化」による回答を集計したものです.日本の内閣府の
景気動向指数と同様,50が景気動向の善し悪しの分かれ目とされます.総合指数
と,上記の各分野の指数が発表されます.

この指数は米国の指標で最も速報性の高いものの一つとされていますが,生産の
グローバル化によって同指数と米国GDP成長率との関係が崩れてきた,という
指摘をCSFB(クレディ・スイス・ファースト・ボストン)社がしています.

この指数が国内経済の動向よりも世界経済との連動を強めているというのです.
それはアンケート対象企業が海外拠点を持っている場合,回答者が国内拠点と
海外拠点との活動を区別せずに回答している可能性があるためです.つまり米
国企業がコスト低下を目指して中国や東南アジア諸国に生産を移行し,国内の
雇用が減少しても,この指標には反映されないことになります.
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2005年11月18日

人民元と円

人民元の小幅切上げがあった後も,米国はスノー財務長官を中心に,事あるごと
に元を「さらに柔軟に」といった表現でさらなる変動幅拡大や切上げを求めてい
ます.一方米国が円相場に言及する機会は以前に比べて非常に減っています.

しかし,米国の執拗な元改革要求の背景に,円高をも望む気持ちがあることは間
違いないと思います。それは以前『人民元と中国経済』という本に詳しく説明さ
れていますが,米国の対中国貿易赤字は元だけが上昇しても解消しないためです.
つまり,元がドルだけでなく円や東南アジア通貨に対しても上昇すれば,対米輸
出品の部品を日本やアジアから輸入するコストが低下し,中国の価格競争力が維
持されるためです.

米国は日本と中国を同時に批判する二正面作戦を取るよりも,経済成長率が高く
米国との貿易不均衡が拡大している中国を早めに動かし,中国の「実績」を日本
に突きつけようとしているのでしょう.米国から見れば日本も「為替レートの柔
軟性を欠く主要な国」であることは間違いないのです.
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2005年11月13日

年足による「トレンド3年」説

過去の値動きは必ずしも未来を予測するわけではありませんが,チャート分析は
まさに過去の動きにのみ依存して将来を語るものです.ここではとても簡単な分
析,つまりいわゆる「年足」というものに着目した一つの法則(?)を紹介しま
す.ドル/円のレートに関するものです.

1971年から2004年まで,年間でドル安(年初より年末の方がドル安)の年が
3年続いたことが4回(71-73年,76-78年,85-87年,2002-2004年)ありま
す.最初の3回は(4回目はまだ結果が出ていません)いずれも,次の年の始まり
よりも年末の方がドルが上昇しました.反対に,ドル高の年が3年続いたことも
1度(95-97年)ありますが,その翌年はドル安でした.

そして,2002年から2004年までのドル安トレンドの後,2005年は第1四半期
こそドル安円高で始まりましたが,FRBの金融引き締めを受けた金利差拡大を
背景にドルが反転し,年末は年初よりドルがが上昇する可能性が高まっています.
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2005年11月12日

米国貿易収支発表!でも慌てないで

米国の貿易収支は毎月半ばに2ヵ月前の統計が発表されます.新しい数字とは言
えませんが,為替相場にとって重要な指標です.
「赤字拡大? 予想以上? ドル売れーっ!」
という反応ですね.しかし毎月その数日後に米国財務省が,長期債と株式の対
内対外フロー統計を発表することを忘れることはできません.

先に出てくる(15日前後)貿易収支の赤字が大きくても,その後(18日頃)
発表の証券フローで米国に潤沢な資金が流入していれるとわかれば,「米国は
経常赤字を海外からの資金でカバーでき,ドル暴落は起こらない」という反応
になることが多いのです.逆に証券フローによる流入が同月の貿易赤字を下回
るような場合は,その後1ヶ月間ドル売り基調になることもあり得ます.

いずれにしても,この両者の関係は,対GDP比率が6%に迫る米国の経常赤字
をファイナンスできるかどうかという,非常に重要な関係をまさに直接示して
おり,それがほぼ同じタイミングで発表されるというわけです.
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2005年11月10日

ドルと巨人のアナロジー

これまで何度となく「ドル暴落」「ドルの失権」と言われながらそのたびにドル
は復活してきました.

それはドルが「球界の盟主『巨人』」だからです.
その共通点は...
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2005年11月03日

為替市場をゆがめるもの

為替レートは本来,輸出入や株式・債券投資などの資本取引による需給,そして
景気や金利などのファンダメンタルズを反映して動くものです.しかしいろいろ
な要素によって,相場はそうしたことと無関係に動く,または逆に動かなくなる
ことがあります.執拗な介入もその一つです.
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その意味では,日銀による量的金融緩和も同じような効果がありました.2005
年夏から日本の株式市場は力強く上昇しました.過去のパターンでは,景気回復
が見えて来た段階で株式市場が上昇する時には,ほとんど円高局面になりました.
しかし今回は株価が14000円を超えても市場は米国の金融引き締めを背景とした
日米金利差のみに注目し,過去のパターンが崩れたのです.
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2005年10月31日

国際債券投資はユーロ高要因

米国発の世界的な景気低迷が懸念され,ユーロが買われた時期がありました.し
かし単にドルがユーロに代替されたというだけの理由ではありません.投資家の
債券シフトが大きく影響しました.債券シフトはユーロへの配分を増やします.

国際株式投資の代表的なベンチマークであるMSCIインデックスでは,米国の組
み入れ率が約60%,ユーロは15%程度です.一方国際債券投資のベンチマーク
(シティ国債インデックス)はユーロが55%に対し,米国は30%です.

つまり,資産配分を株式から債券に変更すると,運用通貨の中でドルの相対的な
比率が下がり,ユーロ買いが増加.株式投資が増えるとその反対になります.
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2005年10月19日

ポジション・トーク

最近はインターネットのおかげで,一般の投資家にも為替相場に関する最新情報が手に入りやすくなりました.日経新聞「マーケット総合」面『マーケットウォッチャー』などは,特にビジネスマンには重要な情報源の一つでしょう.

しかし,そこに「前日まで円相場は米国の金利先高観を背景に弱含んでいたが,バーナンキ次期FRB議長の金融政策のかじ取りに対する不透明感からドル買いの勢いが弱まり」などと書いてある記事の出所は,たいてい銀行や証券会社の為替ディーラーです.

つまり,自分でドル買いやドル売りのポジションを持っている人が,新聞に載ることを前提に話すということは,それによって何らかの影響を期待する部分が必ずあります.わざわざ自分に不利なコメントを出す人はいないでしょう.この,いわゆる「ポジショントーク」には十分注意して市場コメントを読むことが大切です.投資家自身が自分で判断する目を養わなければなりません.

(注)「ポジションを持つ」というのはリスクを取ること、つまり損益が変動する可能性がある状態です。
為替ではドル(他の通貨でもいいですが)の「売り持ち」「買い持ち」というのがそれに当たります。「ポジショントーク」とは、自分のポジションに有利な情報や材料を伝えようとすることですが、とかく不自然さを伴いがちです。
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「ドルの価値」と円相場の政治的側面

「ドルが高すぎるためにアメリカの経常赤字は維持し得ない」と言われます.
この場合のドルとはドル/円レートではなく,たいていの場合FRB(米国連銀)の算出するドル指数を想定しています.これはアメリカの貿易に占める各国のシェアで加重したもので, 相手国のウェイトはカナダの17%をトップに,ユーロ(16%),日本(13%),メキシコ(10%),中国(8%)と続きます。
実際には,ドル/円レートが10%下落しても,この指数は2〜3%しか下落しないということがほとんどです.

理由は,中南米通貨と中国の人民元です.例えば2002年に,アルゼンチンの経済危機を背景にドルが中南米通貨 全体に対して上昇したため,指数に占めるシェアが大きいメキシコペソに対する上昇だけで, 円に対する下落がほぼ相殺されてしまいました.中国も2005年の夏に「より柔軟な」為替制度への移行を発表しましたが,実質的に対ドルでのペッグ制は続いています.

このため,ドル高を是正しようとすればその大部分がユーロと円にしわ寄せされ、 特に対米黒字の大きな日本の円がその標的になりやすいのです.

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