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2005年10月21日

為替市場の規律

為替市場というのは取引所にあるわけではなく,ディーリングシステムや電話による相対市場です.このため公の規制や監督が及ぶには限度があり,いい意味では自由度が高い市場です.

しかしこれは一方で,市場の流動性を無視した,あるいはあえて流動性の限界を超えた無軌道な取引によって市場を操縦しようとする参加者の狙い目になる可能性があるということです.

これは,市場参加者自身の統制によって防がなければなりません.各国の市場にはたいてい "Code of conduct"(行動規範)というものが存在します.この中には,銀行同士または銀行と顧客間での相場操縦的な行為や相場撹乱を容認しないこと,当事者間以外では具体的な取引の主体名を明かさないことなどが謳われています.こうした規範は,銀行を中心とする市場参加者によって制定・管理されており,日本では「東京外国為替市場委員会」がこの役割を果たしています.

バブル期には土地や株式に限らず、ゴルフ会員権を始め様々なものが投資・投機の手段になりましたが、企業の財テクバブルの一面を表していたのが、為替取引の拡大でした。総合商社、大手輸出メーカー、石油会社はもちろん、輸出入取引や海外投資の経験が豊富な企業の財務部門は、為替相場のプロと言えます。 1984年4月に為替の実需原則(実体取引に対応しない、投機的な先物為替取引が禁止されていた)が廃止されたのを機に、彼らが為替取引を大きな収益機会と位置付け、積極的に市場に参加したのは自然の流れでした。

顧客の為替取引は、大きくて1件あたり1〜2千万ドルでした。しかしバブル期には純粋な投機(いわゆるサヤ抜き)目的の取引で、5千万〜1億ドル単位の売買を一度に行う企業も出てきました。東京市場の一日の為替出来高は、公表数値ではドル/円で80億ドル(今の価値で約1兆円)程度ですので、1億ドル程度でも市場に10銭程度の瞬間的なインパクトはあります。

しかし一部の企業は市場を自分で動かすことを狙って複数行(3〜5行)に1〜2億ドルずつの取引を同時に持ち込むようになり、ドル/円よりも東京での取引規模の小さいドル/スイスフランなどで同様の取引を行うこともありました。

こうした場合も、銀行は顧客の求めに応じてレートをだしました。営業政策上、一方的な関係でのツー・ウェイ・クォートです。銀行間でもお互いの了解の上で、A行がB行を「顧客として」レートを出すがB行はA行にレートを出さない、という関係は存在します。ただしこの場合、B行が上のような行動を取るとA行はレートを出さなくなります。これはマナーの問題で、銀行間の取引では市場の秩序を維持するために、この類の暗黙の了解事項が従来からでき上がっています。

こうしたいわば紳士協定が存在する理由は、為替市場が流動性の点で特異な性格を持っているからだと思います。株や債券では、市場に流通している現物の量に制約されます。為替の流動性は通貨供給量とは無関係という意味では無制限ですが、逆に相対取引の当事者間の合意が全てです。例えば何もない状態から
 A行 "Spot Yen for 100?"
 B行 "70-80"
この瞬間にA行にとって1億ドルの流動性が生まれます。しかしB行は、A行が「Mine」(または「Yours」)と言った瞬間、売り手(または買い手)を探す立場になります。同じ立場の銀行が同時に存在すれば、各行が同様に不利な状況に置かれます

複数行と同時に取引するのは、このB行と同じニーズ(売りまたは買い)を持つ市場参加者を意図的に増やすことによって市場の操縦を図ることを意味します。バブル期の東京市場は、一部顧客のこうした取引によって銀行間で億ドル単位の取引が飛び交い、一時期歪んだものになってしまいました。このため銀行はリスク低減の立場から顧客を選別し始め、その結果市場は正常な状態に戻っていきました。



posted by Globe at 17:47 | TrackBack(1) | 為替相場とは | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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