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2006年04月16日

アイスランド危機とは何か

「アイスランドクローナ」という聞きなれない通貨の下落が話題になりました.
その重要な背景とされているのが,円キャリートレードの解消です.インフレ
抑制のためのキャリートレードによる資金流入を呼び,その結果発生した不動
産発生した不動産バブルが崩壊した点で,97年のアジア通貨危機にもなぞらえ
られ,またニュージーランドやハンガリーといった高金利通貨が軒並み下落し
ていることから国際通貨危機の再来を危ぶむ声もあります.

97年のアジア通貨危機を招いた背景として重要だったのは,
 多くの国が固定的な為替相場制度を採用していた
 経常収支が赤字基調で、巨額の外貨建て債務を抱えていた
 国内の旺盛な需要が海外からの短期資金によってまかなわれていた
ということです.今回の「アイスランド危機」の性格を知るために,このアジ
ア通貨危機のケースと比較してみます.


固定相場制度は、その通貨に目をつけた投機資金に明確な目標を与えます。巨大な力
で売りを浴びせ、通貨を切り下げさせることに成功すれば、投機資金は巨額の利益を上
げることができます。それを狙って仕掛けを始めれば、他の市場参加者の目もその水準
に集中するため、結果的に投機の狙いが支援されます。アイスランドクローナの場合は
その目標がありません。さらにアイスランドの場合、為替投機の対象になりにくい理由
がもう1つあります。市場規模が小さすぎるのです。30万人という人口は、日本で言え
ば函館市か大津市です。そして1日の為替取引高は1億7千万ドル。ドル/円ならば
大口注文1件でもあり得る金額で、瞬時に完了します。市場がそのくらいの規模では、
売り浴びせようとした時点で買い手が一斉に逃げてしまいます。買い戻す時も同様で、
全部買い終わる前に相場ははるか上に上がってしまう恐れがあります。従って、今持っ
いる人が逃げ出す以上の売りは、市場流動性に制約があるために起こりにくいのです。
貿易赤字は拡大傾向

アイスランドの貿易収支は2004、2005年と赤字で、しかも拡大しています。アジア
通貨危機では多くの国が深刻な影響を受けました。経常黒字が大きく純債権国であった
台湾やシンガポールは、海外の投資家や銀行から見ても不安が小さかったため影響は比
較的軽かったのに対し、赤字国のタイやフィリピンでは資金流出パニックが起こり、自
力対応が不可能でした。これを見るとアイスランドの貿易赤字の拡大は気になります。
アイスランド経済の輸出依存度が約30%と高い点も、通貨危機当時のアジア諸国と共
通します(通貨危機当時、タイ、フィリピン、韓国が20%台、台湾は30%台。マレー
シアとシンガポールは50%前後でした)。ただし経済全体の構造は若干違います。

アジア諸国では、輸出を上回る輸入が、輸出のための生産力への投資に向けられ、輸入
代金のファイナンスを海外からの資金流入に依存するという経済構造を持っていました。
この場合、海外からの資本流入が止まるということは、そうした経済のサイクルが止まっ
てしまうことを意味します。さらにアジア諸国は海外からの資金を銀行部門を仲介とした
短期借入れを原資として調達していたため、逃げ足の速い短期資金が枯渇するのは簡単で、
その結果輸出に支えられた経済も機能不全に陥ってしまいました。
アジア危機との違い

しかしアイスランドの貿易赤字拡大は、国内の好景気を背景とした消費拡大と不動産・
株式のバブル要因が大きく、主たる産業(輸出においても主力です)が水産業であること
から見ても、海外資金の流出による影響も、通貨危機を起こしたアジア諸国とは異なりま
す。最近アイスランド中央銀行のオッドソン総裁は、「インフレ抑制のために政策金利を
(現在の11.5%から)16%まで引き上げる必要がある」と語りました。こうしたことに
より当然国内経済は冷え込み、その規模は縮小しますが、輸入も減少し、対外バランスは
改善に向かいます。

結局アイスランド通貨危機とは、これまで投資をしていた人にとっての「閉じた」世界
での危機ととらえた方がよさそうです。今後アイスランド経済は減速するため、通貨が近
い将来再び上昇する見通しは非常に薄くなっています。彼らにとって売る以外に選択肢が
ない状況であるとしても、その市場規模のゆえに「静かに」キャリートレードを解消する
しかなくなっています。ファンダメンタルズを無視したキャリートレードがいかに危険か
ということを、もう一度思い出すべきだと思います。

「二十一世紀に生き残る会」HP寄稿記事)
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posted by Globe at 00:10 | TrackBack(1) | 為替相場の通貨 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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Weblog: FXは寝てて儲ける!〜トルコリラとアイスランドクローナ〜
Tracked: 2007-06-17 13:35
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